2016年8月29日 藤田孝典『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』講談社現代新書

 おはようございます。台風が近づいているので風が強く、この季節にしては寒めです。台風の関東直撃は避けられそうですが、東北方面へ向かうようです。お気を付けください。

 さて、続けて表記の本を読みました。著者は実際に若者と貧困対策の現場にも携わり、同時に研究者でもあります。実践と理論が程よくかみ合い、興味深い内容になっています。昨今の若者の貧困問題は、報道されるとおりです。

・親が貧困であると、子供も貧困。

・一度、正社員からドロップアウトすると、貧困の状態が続く。

・非正規の枠から正規の枠に飛び込むのは非常に困難。

・大学などで専門的な知識を学びたくても、授業料が高すぎる、あるいは奨学金の返還が大変。

 このほか、著者は住宅問題を取り上げており、安くて快適な住居の少なさを指摘しています。つまり、正社員であっても、給与の半分以上が住居費で占められたり、いずれにしても貧困層には住宅の問題が大きいとメスを入れます。やはり「衣食住」というのは、生活の根本であるわけですね。

 1990年代前半のバブル崩壊以降、若者が正規の職に就くのは難しくなっており、就いてもブラック企業の問題が付いて回ります。同時に、過重な労働、成果主義、人間関係の軋轢などで、精神的な病におかされる人も少なくありません。そういう人が再び社会に出て、正規の職に就くのは困難とされています。学歴は関係ないそうです。

 また、古い考えの錯誤ぶりも指摘しています。たしかに私たちの親の世代(70代、80代)は貧しかったわけですが、周りも貧しく、地域のなかで助け合いながら生きてきました。ちょうど日本の高度成長期にもあたり、「がんばればなんとかなる」という時代でもあり、給与もぐんぐん伸びていた時代でした。そうしたなかで、結婚をして、子供を育て、マイホームを購入し、楽しい老後を迎えたわけです。

 ところが、今は貧困層が孤立している感があり、また「がんばればなとかなる」時代は終わりました。かつて、パートなどの非正規雇用は、夫の収入を助ける副収入的なものでしたが、今はそれだけで生きている人が少なくありません。誰もが正規にと思っていますが、雇用調整弁的な安い労働力として活用され、企業も正規化を拒む方向にあります。同時に非正規雇用の多くは(一部の専門的な職種を除き)、単純労働が多く、仕事のスキルアップや将来像を描けません。機械の代わりです。

 現在、大学ではいわゆるキャリア教育やインターンシップが盛んに行われています。悪くはないですが、現状を無視した理論的なものであり、実践的なものからはほど遠いように思います。特に、インターンシップは欧米のもとは異なる、理解しがたい形態になっています。こうしたことがあるので、巷の悪徳な就職予備校が儲かるのでしょう。経済的な問題、貧困問題を抜きにして、出口さえ良ければという発想では、若者の対策は非常に難しいように思います。

 余計なお世話ですが。
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プロフィール

渡邊大門(わたなべ だいもん)

  • Author:渡邊大門(わたなべ だいもん)
  • 1990年3月関西学院大学文学部史学科卒業
    2008年3月佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)
    E-Mail:watanabe.daimon■peach.plala.or.jp(■=@)
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