2016年8月30日 人文・社会系の学問の危機

 おはようございます。台風の直撃こそ避けられましたが、なかなか風がきついものです。雨は少々というところでしょうか。涼しいといえば涼しいのかもしれません。

 もう旧聞に属しますが、文科省から通知が出され、「教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」の部分が問題視されました。

 その後、誤解があるとのことで、弁明に必死だったようですが・・・。

 国公立大学は法人化がされたとはいえ、経費の多くが税金で賄われています。授業料は上げても構わないのですが、今のところは横並びです。人文社会系も理工系、医歯薬学系も同じですから、後者はかなり格安といえます。一方で、毎年少しずつ予算が削られており、徐々に人員が減っているという現実もあります。ただ、国公立大学の場合は、例外的に定員を少し割ることはあっても、私立のように大幅に定員割れをすることはまずありません。

 国公立に限らず、私立大学でも人文・社会系の学問は危機を迎えているように思います。多くの私立大学が定員割れを起こしており、学部の改組・転換が頻繁に行われています。法学部は法科大学院が事実上、ほぼ破綻したので、人気が急落しています。逆に社会的なニーズが高いとされる、医療、福祉、看護、教育などは人気があり、乱立状況です。一方で、歴史、文学、哲学などはどうなのでしょうかね。

 現在、大学に進学する人は、就職のために藁をもすがる思いで入学します。呑気に「教養を高める」などと悠長なことは言ってはおられず、「社会に役立つ人材育成」(これは当然でしょうが)を柱とし、実践的なことを学べることが期待されます。かつて短大といえば、英文科や国文科が多かったのですが、今は大半が姿を消しています。一般教育の英語なら文学作品ではなく、会話や時事的なものに力を入れるとかでしょう。

 昔はなかったような初年次教育やキャリア教育も必須です。かつてのように、先生に合わせて授業科目を設定するのではなく、あくまで学生本位になっています。平たく言ってしまえば、出口の就職に全精力を注がねばなりません。大学の評価項目はいろいろあるのでしょうが、すべては就職力に収斂しているように思います。

 世の中がそうなっている以上、「歴史、文学、哲学は大切なのだから切り捨てはおかしい」ということは正しいのですが(自治体における文化事業と同じ)、何らかの方策を考えざるを得ないのでしょう。実際、そうした学科を廃止し、医療、福祉、看護、教育などに転換する例は多々あります。

 ただ、歴史で言えば、多くの人が就職を希望する博物館、美術館、図書館、生涯学習の分野は儲かりません。だから、公的な部分で賄われ、民間はあまり手を出しません。財団法人の博物館なども、今や金利の低下で運営が非常に厳しい状況です。それゆえ、学芸員は正規で雇わず、非常勤が多いわけです。それどころか、運営そのものが民間業者に委託される状況です。

 たとえば、大人500円の入場料で、1日に100人が入場し、月に3,000人が来場したとしましょう。それで入る収入は、月にたったの150万円です。そこから人件費、建物の維持管理費、光熱水費を負担する訳です。そもそも、月に3,000人もやってくる博物館などは、そんなに多くはないはずです。生涯学習の講演も同じです。300円の聴講料で100人が入っても、たったの3万円にしかなりません。足りない部分は、税金で補うしかないのです。

 そのような性格を持つ学問が、いかに生き残っていくのか、存在意義を見出すことは大切な作業になりましょう。
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プロフィール

渡邊大門(わたなべ だいもん)

  • Author:渡邊大門(わたなべ だいもん)
  • 1990年3月関西学院大学文学部史学科卒業
    2008年3月佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)
    E-Mail:watanabe.daimon■peach.plala.or.jp(■=@)
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