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2016年9月10日 自治体史と博物館の図録

 夜は猛烈に寒かったですね。それにしても、あっという間に、9月も3分の1が過ぎました。いやいや焦ってしまいます・・・。

 ところで、最近の自治体史はとても充実しています。本文編では最新の研究成果が盛り込まれ、史料編がある場合は、新出の史料が収録されていることもあります。しかし、問題がないわけではありません。

1 市民目線で見ると、難しいものもある

 市民は歴史研究者ではないので、難解な語句や文章では読んでくれません。また、最近は漢文史料が掲出されていたり、注記が頻繁に施されている場合もあります。難しさが増しています(なかには工夫されているものもあるが)。参考文献が巻末に挙げられているのは大いにありがたいですが、文中にさまざまな文献や史料があると読みづらいように思いました。

2 市民目線で見ると、分厚くて値段が高い

 自治体史は、おおむね500頁の大作になることが多いですが、なかなか読み通すのは難しいものです。しかも、1冊が5,000円以上するものもあり、市民が購入するにはいささか高額です(全部そろえると数万円)。

3 そもそもどこに売っているのかわからない

 書店での委託販売もしていますが、どこに売っているのかわからないこともしばしばあると聞きます。HPにすら載っておらず、在庫があるにもかかわらず、中古で高額なものを買うことも。まれに、自治体史の部署が転々として、行方不明になることもあるそうです。

 自治体史編纂の意義は大変大きいのですが、専門家向けであって、市民目線に立っていないようなものもあります。税の使い道が厳しい現在、そのあり方はもう少し考える必要があるかもしれません。

 たとえば、史料編。古代・中世は都道府県レベルで刊行し、冊子などで新出史料をカバーするくらいで十分だと思います。同じ史料が何度も市町村史で刊行されるのは無駄なのかと。通史編の場合も同様で、古代中世は周辺の自治体史の内容とさほど変わらないこともしばしばです(特に古代)。

 博物館の図録も充実したものが増えました。かつては写真が載っているだけで、ほとんど解説すらないものもあったのですが、今は巻末に論考が掲載されるなど、勉強になります。ところで、以前見た博物館の図録の論考は、完全に論文でした。市民目線で見ると、論文は読んでもわかりません。やはり、展示内容に則したわかりやすい概説が良いと思います。自分の研究は、学会誌などに投稿すべきと思います。

 逆に、ネットが発達しているので、『~市史研究』などの媒体は、積極的にPDFでダウンロードできるようにしてほしいものです。在庫のことを考えると、市町村史も紙にこだわらず、ネットでの公開を考える時期かもしれません(実は、紙のほうが好きですが・・・)。

 財政にゆとりがあるときは、ときの首長が自身の功績の一環として、自治体史を刊行することが珍しくありませんでした。今や、自治体も財政難で、途中で巻数が減らされたり、中止になることもあるそうです。断念するという方向ではなく、市民目線に立って、より効率的な方法を模索する必要があるように思います。

 ↑ 誤解があってはいけないのですが、別に自治体史などの予算を削減しろとか刊行を止めろといっているのではなく、効率的、合理的かつ内容も市民目線に立ったほうが良いのではという考えです。研究者と市民が研究を共有するのは、なかなか敷居が高く難しいなあ、と。
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プロフィール

渡邊大門(わたなべ だいもん)

  • Author:渡邊大門(わたなべ だいもん)
  • 1990年3月関西学院大学文学部史学科卒業
    2008年3月佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)
    E-Mail:watanabe.daimon■peach.plala.or.jp(■=@)
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